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卒業特集2009


(19)レスリング部/藤元洋平
藤元伝説は終わらない
 「レスリングは大学でやめると決めていたので、何か伝説を残して引退しようと思って。『あの人いたな』と思われるような伝説を」――。2009年9月17日、悲願の全日本学生選手権(インカレ)55㌔級制覇を成し遂げた後、藤元洋平(スポ)の口から出た言葉だ。その翌週、「伝説の最終章を完成させる」と宣言した全日本学生王座決定戦(フリー王座)でも、全勝を挙げる大活躍で早大2連覇の立役者となった藤元。観る者の心に、まさに伝説級の記憶を残し、藤元はレスリングマットから去っていった。

 ラストイヤーに華々しい成績を残した藤元だが、3年時までは『勝てない男』だった。2年生の春に東日本学生春季新人戦で優勝した以外は、これといったタイトル無し。2位や3位の山を築いた。太田拓弥コーチ(アトランタ五輪銅メダリスト)も、「洋平は優勝できる実力があるのにそれを出せない」「実力があるが欲が無い」「能力を50%しか出し切れていない」と首をひねる。誰もが認める高いポテンシャルを、なぜか試合になると発揮できない。本人にとっても周囲にとっても、もどかしい時間が続いた。

 思い通りの結果が出ないまま迎えた最終学年。競技生活は大学でやめると決心していた藤元にとって、迎える一つ一つの大会が、正真正銘最後のトーナメントになっていく。その思いが藤元を『勝てる男』へと変えたのだろう。「嫌いなランニングも頑張り」、「遊びも時間も犠牲にして」こなした10キロ近い減量。「これで負けたらもうしょうがない」というほど自分を追い込んで手にしたのが、インカレ優勝という輝かしい学生王者の称号だったのだ。

 藤元がラストイヤーに懸けていた強い思いは、個人戦だけに向けられたものではなかった。最後の団体戦である9月のフリー王座。藤元は最軽量級として先頭で勝った後も、後輩にアドバイスを送り続けた。大会の最優秀選手賞を受賞した藤元だったが、その口から出たのはMVPの喜びではなく、チームメイトへの感謝の言葉。興奮冷めやらぬ口調だったインカレ後と違い、しみじみと「本当に皆に助けられて4年間やって来られました。だから最後に皆で良い思いができて本当によかった。僕の人生の財産になりました」。仲間と共に綴った「伝説の最終章」は、ハッピーエンドで完結した。

 しかし、藤元の『伝説』はまだ終わっていない。自分のみならずチームのために、努力を惜しまず全力を注いできた藤元。16年間のレスリング人生の最後に、大輪の花を咲かせた男。だからこそ、これから足を踏み出していく社会という新天地でも、藤元はまた新たな蕾を開花させていくのではないだろうか。藤元らしく、前向きに、たとえ時間がかかったとしても美しく大きな花を――。藤元の伝説第一幕は見事な完結を迎えた。だが藤元の人生において、伝説の第二幕のページは今、捲られたばかりだ。(記事 及川侑子、カメラ 矢崎佐代子) 
    

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