卒業特集2009
(13)剣道部/雨谷水紀
自分の中で欠かせないもの
早慶戦の大将戦。主将の雨谷水紀(スポ)は部員の期待を一身に背負い、試合場へと向かった―。早大剣道部勝利のため、そして4年間の集大成を示すべく。
早大剣道部には毎年目標としている二つの大会がある。全日本学生剣道優勝大会、そして早慶戦だ。昨年の全日本学生剣道優勝大会で早大は3位に入り、今年は優勝を狙っていたし狙えるだけの戦力が揃っていた。しかし、勝負はそれほど甘いものではなかった。「あと一歩、あと一歩」というところで逃した勝利。全日本優勝という一つの目標を失い、雨谷は剣道に対するやる気を無くしてしまった。「1週間くらいはもう本当剣道やりたくないなって」。3週間後にはもう一つの目標、早慶戦が控えている。主将としてこの状況が良くないこともわかっていた。だが、どうにも気持ちがそちらに向かない。喪失感が大きすぎた。そんな状態から雨谷を呼び戻したのが後輩たちの存在だった。稽古の初め、準備体操の際に前に出て体操を始める。向かいにいる後輩たちを見て、ふと気がついた。「その、いつも通りの姿勢じゃないですか、これからの目標がそのメンバーにはあるし。それを見たときに、やっぱり自分も最後の早慶戦にかけなきゃいけないって」。後輩の変わらぬ剣道に対する姿勢に刺激を受け、もう一つの目標に向かう決心が固まった。
そして迎えた早慶戦。やはり、ここでも勝負の厳しさを目の当たりにすることとなる。試合は一進一退の攻防戦。「予想していた以上に苦しい戦い」だった。そこで、チームを支えたのが4年生の活躍だった。「常に稽古に必死に取り組んでいた」竹越充(人)や、いつも「試合で盛り上げてくれていた」平田啓(スポ)など互いに意識し、切磋琢磨してきたからこそここまで成長することが出来た、欠かせないチームメイト。彼らの活躍で早大はなんとか大将の雨谷までつなげた。勝負を分けたのは、大将同士の最終決戦。慶大の大将は小学生のときからのライバルだった。互いに手の内は良く知っている。試合は中々決着がつかず長い延長戦へともつれこんだ。30分、1時間と時間ばかりが流れていく終わりの見えない戦い。試合時間は2時間にも届こうかとしていた。そこに終止符を打ったのは雨谷が得意技と自負する、小手だった。「自分が『ここだ』っていうときに決めるのが小手」。その一本が早大に勝利をもたらした。

実家は道場、兄弟も皆剣道をしており当たり前のように竹刀を手にしていた。そんな雨谷が自分で選んだ早大剣道部という場。「本当に全てが最高だった」この場。集大成とも言える早慶戦でやることはやった。それでも「あと一年でも良いから、もう一回やってみたい」と思えてしまうほど早大剣道部というものが大切なものになっていた。
卒業後は実家の道場で子供たちに剣道を教える。礼儀作法など剣道から学んだことは数え切れない。勝つことの喜びに加え、そういった剣道の良さを子供たちに伝えたいという。そして大学で経験し学んだもの、その全てを活かして「剣道を広めていくのが自分の夢」。「剣道がないとだめな人生で、楽しくて、やってなきゃやっぱだめだなって」と語る雨谷にとって剣道とは「自分の中で欠かせないもの」なのだ。それゆえに雨谷の剣の道が終わることは無い。 (記事、カメラ 谷口奈津希)
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