卒業特集2009
(12)フェンシング部/大澤三洋
「人間づくり」のその先へ――
2009年11月、全日本学生選手権(インカレ)。大澤三洋(スポ)の剣が相手の胸を捉えた。4年間の思いすべてが詰まった、圧巻の一撃だった――。宙へ跳ね上がり、そして床に転がりこみ全身いっぱいで思いを表現する大澤。早大フルーレ男子が、インカレ制覇、学生日本一という早大史上初の栄冠を手にした瞬間だった。
大学入学後、大澤が漠然と目標として掲げた『優勝』。漠然とではあったが、とりあえず『優勝』し、最終的に「学生日本一になりたかった」。一つ目の目標はすぐに達成される。1年秋の新人戦で、強豪ぞろいの同輩を征し『優勝』。洋々たる前途の幕開けかと思われた。しかしその後、大澤は頂点から遠のく。2、3年と、個人戦の成績は低迷。後輩に恵まれたことから団体戦ではインカレで準優勝など結果を残すが、目標の『優勝』には届かなかった。「自分で考えていたことに成績が追いつかない状況が続き、ずっと不安だった」。3年生から4年生にかけて主将を務めるも、チームをまとめるどころか、自分のことで精一杯だった。それでも後輩の活躍や頑張る姿に駆り立てられ、「頑張らなければ」と自身を鼓舞した。
仲の良さが売りと言っても過言ではない早大フェンシング部。それ程に彼らは先輩後輩の隔たりを感じさせない。これは大澤自身が意識して実践してきたことでもあった。「先輩が後輩に意見をすることは簡単。でもそれではコミュニケーションは生まれない。後輩の意見を聞いて、それを受けて自分は何ができるかを考えること」。これが大澤の理想だった。大澤の理想の下、格段たる結束力を備えた早大男子フルーレは、大澤が4年の最後のインカレでついに悲願の『優勝』を手にした。大澤は「奇跡だった」と笑って振り返る。結果はもとより、3年間ともに歩んだ後輩2人と勝利をつかんだという事実が、素直にうれしかった。
『人間づくり』。それが大澤にとってのフェンシングだ。対人競技であるフェンシングは、大澤に「人との接し方を教えてくれた」。相手の体格、構え、ちょっとした視線や体や剣の動きから、相手の攻め口を読み取り、弱点を探り、自分の技を出すフェンシング。それは「ある種の駆け引き」である。駆け引きの中から、自分がどう動くか、どうすれば問題を解決できるかという糸口を、フェンシングは与えてくれた。大澤は大学卒業とともに現役を引退する。しかし、16年間のフェンシング人生で得たものをこれから社会の中で、特に人付き合いの中で生かしたいと考えている。心の剣がぶつかりそうになるとき、大澤は器用に渡り合うことができるだろう。『人間づくり』のその先へ――大澤の第2の人生が始まる。(記事、カメラ 片貝早輝子) 

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