携帯アクセス解析
back

インタビュー

top
【卓球】ロングインタビュー!4選手が岩手県立高田高を訪問

ロングインタビュー
7月16日
早大卓球部練習場


早大卓球部がインターハイに29年ぶりに出場することが決まった岩手県立高田高校の卓球部に7月9、10日の2日間、指導のために訪問した。派遣されたのは各学年から一人ずつ、高岡諒太郎(スポ4=東京・実践学園)、矢野敬之(社3=大阪桐蔭)、寺田翼(社2=東京・早実)、山本直哉(スポ1=山口・野田学園)の4人。早稲田スポーツは彼らの活躍の様子を事後取材した。

●きっかけ

一日目。高田高の選手と記念撮影

今回の派遣は、早大野球部OBで同高野球部監督・佐々木明志氏から「卓球部がインターハイに出場することになり、ぜひ力を貸してほしい」と早稲田大学のボランティアセンター(WAVOC)に連絡したことがきっかけ。

派遣された4人を選抜したのは伊藤監督。帰ってきたらそれぞれの学年にそれぞれ見たこと感じたことを伝えられるようにという意味が込められている。そしてレベル的に下の人が行っても意味ないと、レギュラー級の選手を送り出した。

最初に話が来た時、選手たちはどんな気持ちだったのか。
「嬉しかったです。テレビで見ていたところを自分の目で見るのと見ないのとでは全然違う。インターハイも出たのは奇跡的。29年ぶり。しっかり力になりたかった」(高岡)
「ずっと被災地に行ってなにかしたいと思っていた。でもいざ行くってなって自分たちに何が出来るのか、行って迷惑かけないのかっていうのはあった」(矢野)
被災地の役に立てることへの素直な喜びがある一方で、自分たちが行くことに対しての葛藤が選手の中で渦まいていた。


●現実

がれきの山。悪臭が漂うことも

実際に現地につくと、選手たちはテレビで見た映像の現場を前に、言葉を失ったという。場所によっては「魚が腐ったような」悪臭が襲った。少し窓を開けると、移動中の車にハエが何匹も入りこむこともあったという。

陸前高田についたとき、寺田はあることに気付いた。
「海の匂いがしないんですよ。海の近くなのに潮の匂いが全くしない。海の近くの独特のにおいがするはずなのに。」

津波の被害のあった地域では、爪跡は明らかだった。
「家の構造の基礎だけが残ってたりっていうのを見て、ああここにもたくさんの人が生活をなしていたんだなって」(寺田)
「道とか、流されたところに、お皿とか、服とかが落ちていて、人の生活していたところにあんな津波が来ていて、最初ほんと信じられなかった」(山本)

●初対面

陸前高田市のマンション。4階部分まで津波が襲ったとみられる

初日はスポーツセンターでの練習だった。そこには、4人の高校生が待っていた。距離感というものに最初は非常に不安があったと、選手たちは振り返った。
「1日目は気まずいというか、ストレートに物事を聞いたらまずいなっていうのはあって」と寺田。最初は卓球の話、インターハイの話をしたという。
高岡もデリケートな話題は控えた。「もう地震のことには触れないで、卓球のこと、前向きなことしか。それが自分のできることだと思っていた。行く前からそう決めていた。」
それでも、高校生の練習への姿勢は意外なほどにひたむきだったという。
「不安も多かったんですけど、高校生たちみんな、あんまり引きずってなくて、あのことを。みんな一生懸命練習に取り組んでくれて、自分たちともふつうに話してくれて、そういうところは安心しました。」(山本)


●練習場は

岩手県立高田高校。右奥に見えるのが第一体育館。卓球部の練習場だった第二体育館は流された

今は近くの高校やスポーツセンターに体育館を借りたりして練習をしている。練習場であった第二体育館は、津波で流されたのだ。
「地震のときなにしてた?」矢野は高田高の選手たちに質問を投げかけた。
「練習してたと。『高台に避難しろ』って言われて、着の身着のままで避難して。まさかあんなのが来るとは思っていなかったらしくて、津波が、一瞬でバーっと。練習場も流されて。」(矢野)

●両親を失った少年

選手たちが派遣されていた7月10日、三陸沖で3月11日以来の津波が観測される地震が起きた。ちょうど高校生と練習しているときだった。
寺田は地震で練習が中断している1、2分の間、一緒に練習していたある少年に話しかけた。
「家とか地震で大丈夫なの?」
答えは衝撃的だった。津波で家を流され、両親も失ったという。
「それに対して僕が言葉を失っちゃって。何を言ってあげればいいか分からなくなっちゃって。」(寺田)
彼は、自分から言葉を続けた。「僕は今卓球頑張ってるんで大丈夫ですよ。」
「大事な家族をなくした子がこんなに頑張っているんだから、僕らも頑張らなければいけないなって、思いました。」(寺田)


●「全国のみなさんありがとう」

無数に積み上げられた車

選手たちは、岩手県のコンビニに入って気付いたことがあった。関東だったら「がんばろう日本」と書いてある標語が、東北では「全国のみなさんありがとう」「津波なんかに負けないぞ」だったのだ。
「こっちはがんばろうで、向こうはありがとう。なんかうれしかった。」(矢野)

●還元を

東北の人は前を向いている。では、関東のわたしたちは一体どうしたらいいのだろうか。無責任なエールは傷つけるかもしれないし、被災地を憂慮して暗い日々を送ることは望まれてないはずだ。その答えを、選手たちは持って帰っていた。

「頑張れ頑張れって思うだけじゃなくて、被災して大変な状況の人たちも頑張ってるのだから、それに負けないように、僕ら不自由ない生活をしている人たちが頑張らなければならないな、ということは伝えたい。」(寺田)
「厳しい環境の中でみんな一生懸命練習していて、僕たちもそういう人たちに負けないくらいもっと頑張らなきゃいけない」(山本)
そう、関東のわたしたちが沈んでいてはいけないのだ。高田高の選手たちは普通の高校生となんら変わらない、はしゃいで、いじりあって、ふざけあって、楽しく過ごしていたという。東北のエネルギーを間近で感じた彼らは、逆に勇気づけられて東京に戻ってきた。

全日本大学総合選手権(団体の部)(=インカレ)が、きょう19日(火)から大阪で行われる。ワセダの選手ももちろん出場する。
「高田高の選手には、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)で頑張ってもらいたいですし、一方で僕らが頑張って活躍して早稲田大学がインカレで優勝した、リーグ戦で優勝したっていう成績が卓球王国(雑誌)に載ることで、彼らに『来てくれた人たちが写ってる』って思ってもらって両方元気づけられるというか、頑張れるっていう風に感じました。」(寺田)
この経験で出会った人たちのためにも、インカレは絶対に負けられない。静かに闘志を燃やしている彼らは取材後、再び卓球台に向かった。

(記事 千葉太一、編集 亀井未希、写真提供 卓球部)


左から、高岡、矢野、寺田、山本直

◆高岡諒太郎(たかおか・りょうたろう)
スポーツ科学部4年。東京都・実践学園高校出身。右シェーク、裏・裏。チームに欠かせない4年生トリオの一角。力強い卓球が持ち味

◆矢野敬之(やの・たかゆき)
社会科学部3年。大阪桐蔭高校出身。右シェーク、裏・裏。写真提供は矢野選手が撮影。今回の派遣のためにデジカメを買ったそう

◆寺田翼(てらだ・つばさ)
社会科学部2年。東京都・早稲田実業高等部出身。右シェーク、裏・裏、インカレメンバー入りを果たし、やる気十分だ

◆山本直哉(やまもと・なおや)
スポーツ科学部1年。山口県・野田学園高等学校出身。右シェーク、裏・裏。5月に行われたリーグ戦に1年生ながら出場。勝利はお預けとなったが、この先ワセダの核になることは必至



©早稲田大学