『天才』――。この言葉が、松永弘樹(スポ3)には一番似合う。上本博紀(平21スポ卒=現プロ野球阪神)、土生翔平(スポ2)らと同じく名門・広陵高出身。同高の中井哲之監督に「上本よりも能力は高い」とまで言わしめた実力は確かなもので、2年時には遊撃手として定着する。持ち前の安定した守備に加え、昨秋には初めて打率3割をクリアするなど打撃でも成長を見せており、走攻守三拍子揃ったリードオフマンとして一躍六大学リーグを代表する内野手となった。そんな松永だが、試合中にあまり深く考え過ぎることはないという。「打撃ではとにかく塁に出ること、守備ではとにかくアウトにすることだけを考える」。天才・松永の真骨頂はここにある。
飛躍のシーズン
当初は守備のイメージが強い選手だった。「応武監督(篤良=昭56教卒)にも認められた」守備範囲の広さと、難しい打球も難なく処理する高い技術。昨季は「理想としている」無失策をマークした名手だが、松永の持ち味は守備だけではない。時おり打席を外して相手投手を揺さぶり、走者を塁に置いている場面ではきっちり送れる。さらに小柄ながら長打力も抜群で、いまや攻撃の場面で目立つことが多くなってきた。昨季は、特に顕著だったと言えよう。立大3回戦で虚を衝くセーフティースクイズを決める小技を見せたかと思うと、明大2回戦では3点本塁打を放つ勝負強さを見せている。「好、不調が激しかった」と本人は振り返るものの、自身初となるベストナインに輝くなど飛躍のシーズンであることは確かだった。その活躍を支えているものとは、何か。「塁に出ること」、「アウトにすること」だけを考える松永にとって、もはやその天性の感覚だけがこの活躍を生み出すのか。取材をしていくうちに、松永の活躍の裏にある意外な一面が浮かび上がる。それは怒られ役という一面である。

[P:68]今季も先のことは考えず、プレーに徹する